【100日100話】066 教師が無駄遣いできた頃

   

教師が無駄遣いできた頃

チャッ、チャッ、カンッ!
ふいに鳴子の音を聞くたび、運動場の砂の香を思い出す。
今では埋められることが多いという、ざらざらと固い土の原。体操服と赤白帽、伸びきったしょっぱいゴム紐 に、鳴子を掲げた手のひらの群。
90年代前半、まだぎりぎりバブルの残り香が漂っていた頃、私たちは虎パンをはいた赤鬼を思わせる、やたらカラフルな”楽器”を配られたのだった。
『今年の運動会は、よさこい踊りをやります』
教えられたそれが、正式な動きだったかはもうわからない。民謡じみた、しかし妙に明るい曲とともに、担任の指示するまま私たちは踊った。鳴子はうまく鳴るときと鳴らないときがあり、下手を打つとなんとも情けない音がしたが、一学年に二〇〇人弱いたため、うまく紛れてそれなりに様になっていた。
シロコナのにおい。ざっざりと足音。土煙は立ち上り、私はせき込んだ。
『着替える前に鳴子を返してくださーい!』
『鳴子を返してから着替えに行ってくださいー!』
――がちゃがちゃと最後に返した、あの鳴子は今どこにいるのだろう。
今でも耳に残る音曲は、運動会以来ふつりと絶えた。

今日のお題は「鳴子」です。
ネタ出しのためにググったら温泉の方がたくさん出てきて驚きました。栗団子おいしそうでした←