【100日100話】017 かすかな縁から

   

今日のお題は「不知火」です。
どこぞのテンション低めな艦娘じゃないよ←

かすかな縁から

漆黒の空と海の境に、ぽつぽつとひかりの筋がにじんでいく。
古の時代、夜に惑う聖王をこの地に導いたと言われる灯火。この世界では未だ解明されていない、秘された謎のひとつだ。
「どう? ニホンのものと同じかい?」
「わからないわ……この目で見るのは初めてだもの」
背の高い方に尋ねられ、小柄な人影は戸惑う声でそう答えた。
科学に見放された病により視界を失ったその小柄は、魔術という人外の業によって再びその目にひかりを戻した。それはあまりに偶発性の高い、奇跡と呼ばれるものである。
「僕らにとっては、あのひかりも君の存在も等しく不思議なんだよ。君は明らかにヒトの類なのに、僕らですら知らない業を使う」
知らぬ国、知らぬ世界から現れた小柄な異邦者。背の高い術師がそれを匿い世話したのは、気まぐれな哀れみ以上にその業の知識のためだった。
「知識があれば誰でも使えるものよ。でも、こちらでそうなるのはもう少し先でしょうね」
こちらのヒトは小柄と似たような形をして、似たような発想をするところが多い。ならば多少の違いはあれ、いつか科学という思考の姿に行き着くだろうと異邦者は考える。それを促進するつもりも、口を挟むつもりもなかった。
「つまりあの火の謎も、君は教えてくれないと言うわけだ」
「魔術は私もわからないもの」
人外の術がヒトにわからないのは、思考を支える文化も常識もまるで異なるものだからだ。まず感覚器が違うために、当然視するものが自ずと変わってしまうのである。ヒトに赤外線は見えない。超音波も聞こえない。
「世界を識る近道ができると思ったのになあ」
「急ぎすぎない方がいいこともあるわ」
短命な異邦者と長命な術師は、そう言い交わしながら神秘の火を見つめていた。