【100日100話】059 その名を持つものは幅広く

   

その名を持つものは幅広く

「ひいらぎ食いに行こうぜ!」

九州生まれの奴が言った。

「こっちで食べられますのん? えらい久しぶりやわあ」

関西生まれの奴も言った。

「……美味いのか?」

私に聞けたのはそれだけだった。
自分は地理に疎い。名産などにはもっと疎い。
だから、あの固くトゲのあるひいらぎの葉を、食べる地域もあるやもしれぬと思ったのだ。

「普通は取ったとこで消費しちまうけなあ。取れたてを煮つけて食べると美味いんだぜ」
「さばいて生で食べるんもええですわ。あとは、おみおつけに入れることもありますか」
「ずいぶん幅広いな」

あの葉は一枚が小さい上に、刺さるとひりひり痛む、というところからひいらぎと呼ばれるほどだ。調理のためにトゲを落とすのは、さぞ大変な作業だろう。

「家庭料理――っつーか、漁師料理か。店で出すとこはそぉないわな」
「大きいもんは、祝いで食べることもありますがね」

なるほど、だから漁港に向かっているわけか。
その辺のものではなく、海風にあたった樹でないと美味しくないのかもしれない。
よほど時化で苦しんだときに試したのだろうか……

と、かつての漁師を偲ぶ自分に出されたのは。
アジに似た色合いの刺身と、平べったい魚の煮付けだった。

「葉っぱじゃねーじゃん!」

――爆笑されたのは言うまでもない。

***

今日のお題は「ヒイラギ」です。
ペンネームから病院などの施設名まで、幅広く愛されてる単語だなあと今回調べてしみじみしました。
「植物」とか「花言葉」とか入れないと、葉っぱの方の柊出てこない。

ちなみに魚の方は、 硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区刺鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ヒイラギ科ヒイラギ属ヒイラギ、と言います。