【100日100話】081 まだ朝の5時なのに!

   

香茶の匂いもしないのに、ゆさゆさと揺らされて目が覚めた。
「覚めたわね、さあ起きて! 素敵な朝よ、アンディ様のためのような朝だわ!」
「……暗いわね。今何時」
「夜明けよ」
「夜明け?!」
思わずレディにあるまじき大声を上げてしまった。
だって今は社交期なのだ。連日朝まで夜会が開かれている時期なのに、早起きをする淑女なんていない。
けれど隣で寝ていたはずの彼女は目を輝かせ、ふくふくとした頬にえくぼができていた。完璧に起きている、どころか暴走している。
「だってアンディ様の初日なのよ、眠るなんてもったいないわ!」
「舞台は日が沈んでからでしょう……」
「ねえ何を着ていったらいいかしら、わたくしどうしても決めきれなくて今日の気分に合わせようと思っていたのだけど結局迷っちゃって困るのよだってアンディ様が見るかもしれないのだもの! 髪結いは特に得手の者に頼んでいるのだけど、あ今から流行りの型を試した方がいいかしらね?」
だめだ聞いてない。
けれど、彼女の愛らしい顔は余りに鮮やかで、頬まできらきらと輝いていて、なんだか怒る気も失せてしまうのだ。
「夕方寝ちゃっても知らないわよ」
「寝ないわよぅ失礼しちゃうことっ」
ふくふくした頬をさらにふくらませる幼なじみのために、気の落ち着く香茶を淹れさせることにした。せめて昼寝がしたい。

「24時間の過ごし方」より
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