【100日100話】085 楽しい一日が始まった9時

   

夏場のおでんというのも乙なものだ。セブン-イレブンの味の滲みた大根に、甘さのあるヱビスビールを合わせると、それはもう至福が描かれる。
「でもちょーっと重かったかなあ」
ビールは季節で味を少しずつ変えてある。秋冬のビールに合う肴が、必ずしも夏に合うわけではない。それが難しいところであり、おもしろいところでもある。
「蒸し枝豆じゃ弱いか……あ、焼き鳥食べたい」
常備の薄い缶詰を取り出し、レンジ少々。卵をかけて同時に温めれば、即席の親子丼もどきも作れる優れものだ。
「んーっ、やっぱこってりはビールに合うよね!」
言いながら市販のポテトサラダをひとすくい。
塩辛やアンチョビと和えても美味いが、それは後のお楽しみ。広島名物・おたふくソースを上からかけて頬ばれば、甘いソースのわずかな辛さが、さらにビールを進ませる。
「あー、空いちゃった……」
2本目を前に逡巡しばし。どうせ今日はちゃんぽんなのだ、順は気にすまいと日本酒に手をかけた。
ふつふつと泡粒の上る発泡系は、どこかシャンパンを思わせて酒の楽しみを広げてくれる。
「で、合わせるなら豚足だよね!」
どこに向かってやらさっぱりだが、力強く断言するように、日本酒=和食とは限らない。場合によっては餃子に合わせるのがいいという人もある。
『酒クズー』
『酒クズめぇ』
『肴くらい自分で作りなよ』
『嫌だもう会社着いてないのに帰りたい』
わいわいと流れるタイムラインへ向けて、さらに軟骨の唐揚げを送り出すと同時、流れが急に鈍くなった。
大方の会社における始業時間。
知り合いのほとんどが働いている中、弾ける酒をぺろりと舐める。
ああ、平日休みのすばらしきことかな!

「24時間の過ごし方」より
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