【100日100話】053 誰も知らない

   

今日のお題は「冬木立」です。
中身は想像におまかせします。

誰も知らない

葉の落ちきった木々の下で、煙がゆっくりと昇っていく。
「のんきだなあ」
「田舎だからね」
タイヤを燃やせばダイオキシンだが、枯れ葉を燃やせばよくある姿。誰ぞが芋でも持ち込めば、童謡めいた風物詩だ。
「背中寒ぃ」
「餅でも買やよかったか」
「悪趣味」
「だって不自然過ぎね? 野郎2人で巨大落ち葉焚き」
「ブログのネタです、とか言っときゃいいさ」
その間にも炎が揺れる。葉を焼き布をなめ燃えさかる。
「臭いしないな」
「全部天然でそろえたからね」
「添加物分くらいは臭うかと思った」
火の手はますます強くなる。内の内まで黒く燃えていく。
冬枯れた、木立の中には誰も来ない。
「……本当、のんきだ」
「だから言ったろ、よくある話なのさ」
田舎という、超限界集落。自分たちが、不自然でもそうでなくても、気づけないほど人がいない。
「薪を足すかい」
「先に枝だな」
そうしてたっぷり2時間、ネパールやインドの4倍近く、巨大な焚き火は燃え続けた。木々だけがそれを知っている。