【小説】バカな話さ。

   

豆まこうぜ! と10人に誘いをかけて、9人断られたら中止するもんじゃないだろうか。
「つかまったんだから覚悟しぃ」
「鬼はやらねーぞ、掛け声で我慢しろ」
にしし、と笑う坂田に豆の升を押しつける。よくあるスーパーの紙製じゃなくて木製だ。どんだけ気合い入れてんだよ(笑)
「豆まくの初めてなんだよね!」
「2○年何やってんだ」
「伏せ字にするほど年じゃないですぅー」
若いのに比べりゃ年寄りだろ。
「うちは坂田金時の遠縁だからまかなくていいんだってじいちゃんが言ってた」
「うちは渡辺なのに豆まいてたなあ」
「って言いながらなに升から食べてんの」
「豆」
「見りゃわかるわ」
「大豆」
「もっと見りゃわかるわ! まく分なくさないでよ!」
「食う分までまきそうだからな、予防策だ」
おにはそと、ふくはうち。バカ話は尽きない。
「坂田と渡辺が豆まいたらあれじゃん? 鬼に金棒級?」
「泣いた赤鬼が出るな」
「役目的に青鬼」
「自己犠牲のうえに豆投げられる青鬼」
「つら」
「しかも坂田と渡辺に豆投げられる鬼」
「まじつら」
「少林寺が演武でやる蹴りみたいなもんだな。二度と近寄るなと覚えろ、っていう」
「まじダメ押しすぎて世界救える」
「世界を救う豆まきRPG」
「VRでやりたい」
「そしてまいた豆ふんで転ぶ」
「VR却下」
「なんて言ってる間に豆が尽きそうなんだが」
「任せて、落花生あるから」
「だからどんだけ――」
ズイ、と横から出されたのは、白に赤のパッケージが有名な某落花生菓子。
いや素直に言おう、チョコレート菓子だと。
「……まけって?」
「年の数だけ落花生食べるってところもあるらしいから買っただけだし? 好きにすれば?」
顔をそらさないのは勇敢だ。代わりに視線が泳ぎまくっているけど。
10人中9人に断られた、なんて訳がないのに、呼んだのはこいつで、来たのは俺だ。
ご要望にお応えすべく、ひと粒をつまんだ。

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公開執筆のテストを行った際に即興で書いたものです。

当時の執筆メモなどがこちらに残っていますので、興味のある方はどうぞ。