【100日100話】050 共有は遠く、終わるには近すぎて

   

今日のお題は「桜紅葉」です。
とってもきれいだったので画像検索おすすめです。
あ、読んだ後でね!←

共有は遠く、終わるには近すぎて

小春日和の空の下、色づく葉の群を蹴りながら進む。
開けた場所でぶわりと視界を埋めつくすのは、柿や臙脂の同系色だ。朱く紅く染められた葉は時折ひらひらと散りながら、無数の赤で木々を飾りたてていた。
「やあ、これは見事だ」
胸の下から声がする。半手動の車いすは重いけれど、そう言われるなら悪い気はしない。
「今年は花見ができませんでしたからね。こういうのもいいでしょう」
「君は意外なほどものを知っている」
「これでも日文専攻ですから」
つんとすまして言ってやれば、胸の下がくつくつ笑う。車いすに載る足がなければ、まったくもってあの頃のようだ。
「まさか今日は馬肉など持ってきてはいないだろうね?」
「そもそも弁当はありませんよ」
「なんと嘆かわしい」
口調だけはあの頃のまま、けれど会話すら変わっていく。
「ほうじ茶は入れてきましたから。それで我慢してください」
「ふむ、この足で茶席は難しいか」
「そもそも菓子がダメなんでしょうに」
あの頃には当たり前すぎた時間は、ここでは散る枯れ葉のようにあっけない。
「どこに停めましょうかね」
「どこにするかねえ」
辺りを見回す私たちの下で、借り物の車いすがきゅるきゅると音を立てた。