【100日100話】088 12時の空腹

   

正午は腹が減った。いつも彼は空腹なのだ。
「十時、三時、ご飯に行こう」
「やれやれ」
「仕方ないね」
それなりに空腹になりやすい時間をつれて、正午はいつもの食堂へと向かった。
「三時は相変わらずプリン好きか」
「そう言う十時だって饅頭付きだよ」
「ほどほどにね。ここのは好きに取れるのがいいんだから」
チェーン展開する食堂、というイメージ的に言語矛盾な店内は、ショーケースに沿って並ぶサラリーマンたちで今日も賑々しい。正午はカツ丼と牛とじを選び、副菜としてほうれん草のナムルと白和えを添えた。
十時はきつねうどん、三時はいなり寿司数個とごま和えを取り、それぞれに席に着く。
「やっぱり正午は大食いだね」
「正午だからな」
「何だよそれ」
今は平日だから正午の空腹がすさまじいが、週末ともなれば十時や三時の方が食欲を増してくる。寝坊と食いっぱぐれのためである。
「そういや二時もここんとこお腹が空くらしいよ」
「あれだろ、甘味は三時前に食べると肥らねぇってやつ」
「今度また誘うか」
そうだな、とうなずき合う頃には皿がみな空になっている。
この早食いの癖ゆえに他の時間がつき合えないことを、彼らはしょっちゅう忘れていた。

「24時間の過ごし方」より
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