【100日100話】062 無題

   

今日も銀杏並木から
潰れたギンナンがにおい立つ

今日も誰かが飛び込んで
今日も誰かが消えたがって
今日も誰かが奪われる
自動車で潰れた実みたいに

たくさんとったらかちですか
いち度にとったらかてますか

私が知ってる私の涙は
何にも意味がないですか

生まれる前から苦しいのに
さげすむ目だけが続いてく

今日はあの子が散らされて
今日はあの人巻き込まれ
明日は誰が泣くのでしょう
においのしみついた地の上で

なけなかったらまけですか
解らなかったらまけますか

ずっと前からいるのです
傷も痛みも本物です

異常なほどにありふれていて
訃報欄すら縮みもしない

『お前の傷がなんだというの』
『世界がこんなに大変なのに』
『餓えも殺されもしないまま』
『何をぜいたく言ってるの?』

今日もギンナンがにおい立つ
銀杏並木を歩いたら
靴をセスキで洗いましょう
それだけができることだから

今日のお題は「銀杏」です。