NovelJam1日目の1~ファーストコンタクト~

 最初の二文字を聞いたとき、すぐに自分だとわかった。

 わかっても信じられない、ということがあるのだと、その時知った。

NovelJam1日目

 夜行バスは寝られなくなったから二度と乗るまいと思っていたのに、朝の出発では開始に間に合わないことがわかって、うなされもがきながら夜行バスで東京へと到着した。

 小説版異種格闘技大会ともいえるNovelJamに参加したのは、プロに自分の作品を評価してほしかったからだ。

NovelJam(ノベルジャム)2018という小説制作イベントに参加します!
厳正なる選考の結果、NovelJam(ノベルジャム)2018参加決定しました! 著者として編集者とデザイナーとチーム組んで2泊3日で新作...
https://www.noveljam.org/

 翌日から仕事がありながら、懇親会まで参加すべく夜行バス探しに精を出したのも、前回懇親会に審査員が参加し、個別に評価してくれた、と聞いたから。

 結果として、夜半に横浜から岡山まで夜行バスに乗り、翌朝岡山から新幹線で広島に戻ることになったわけだが、全く悔いはない。

 さて、会場最寄りの北野駅でうっかり「いかにもな町の和菓子屋」を見つけて桜餅と巻き寿司を買ってしまったり、温かいものを食べるようアドバイスを受けてフレッシュネスバーガーでベジタブルスープを飲んだりしつつ、私は会場へと向かった。

 なお会場に向かう途中で似たようなトランク姿の人を複数見かけたり、その人たちがやっぱり同じバス停で降りて歩いていったりするのを見ながら、(……コミケかな?)と思ったのは内緒である。

 あと途中の急な階段で、荷物を持ってくれた方がどなたか思い出せない。その節はありがとうございました。

 セミナーハウスの敷地内をぐるぐる回りつつ、奥まったところに会場はあった。

 ウェブサイトで見たとき、古い施設のようだったので防寒具を強化してきたのだが、予想以上に暖かい。

 私はかなり早くついてしまったらしく、とりあえず適当な席について配られた資料を読んだり、買ってきた寿司や和菓子をもぐもぐしたりしていた。

 開始30分ほど前、トイレから戻ると、部屋には人がみっちり詰まっていた。

 は、入りづらい……

 私は内向性が強いので、大勢の人の中に入るのは緊張するのだ。

 同席になったのは、高橋文樹さん(@takahashifumiki)、山田しいたさん(@yamada_theta)、金巻ともこさん(@tomoco)。

 高橋さんは破滅派というグループの編集長で、名刺にはCEOと書かれていた。受賞実績も多く、前回参加者でもある。

 山田さんは漫画家で、ウェブ上に作品が掲載されている。高橋さんとはSF関係で知り合いらしい。

 金巻さんはゲームシナリオなどを書くお仕事をしているらしく、話す合間のタイピングがめっちゃ速い。某社の社長さんだそうだ。

 ……事前のTwitter検索でも思っていたけれど、こんなそうそうたるメンバーの中で、なんで実績ゼロの私が拾われたんだろうか。

 友人知人は「100日100話企画」「イカイの契約者」のことを、実績だよ! と言ってくれるけれど、私の作品が身内の外に出たことはほぼない。

 同席の彼らだけではない。参加している著者16名の中には、プロのシナリオライターが複数いるし、小説以外のメディアで実績のある人もいる。

 後から聞いた話、著者の申し込み数は定員の4.5倍だったそうだ。

 運営の誰かに聞いてみれば良かったな、私を選んだ理由。

 あと五十音順でもないのに、参加者リストのトップに私の名前が入っていた理由も(いやあびびったよね!)。

 13時。

 NovelJam主催である、日本独立作家同盟の代表鷹野凌さん(@ryou_takano)が厳粛に開会宣言を行い、のほほんとオリエンテーションが始まる。

 確かこの辺りから、ニコ生で会場の様子が流れていたはずだ。

 私は顔出しNGをお願いしていたので、最後までいろいろ配慮していただいた。

 後ろ姿とかが写真に写っていたのは、まあ、致し方ないよねと思っている。

 オリエンテーションが終われば、いよいよ運命の分かれ道、この3日間をともに戦い抜くチーム決定の時間だ。

 今回は編集者が自分をプレゼンし、著者とデザイナーがそれを選ぶという、ねるt……合k……まあなかなか斬新な決定方法である。

 前回運営がチーム決めを取り仕切った反省の結果でもあるという。

 さて、波長の合いそうな編集はいるだろうか。

 私は内向性が強いし、先天的なコミュニケーション障害もある。相性が悪い相手だと、沈黙で一日つぶしてしまいかねない。

 なにより、障害支援の担当者に「無理ダメ絶対」を厳命されているのだ。頑張れるのはおそらく6~8割まで。しょぼい火力をさらにしょぼくすることは避けたい。

 私は配られた投票用紙に順番を書き、候補に逐一チェックをして、最後に選ぶことにした。

 弱い短期記憶を駆使して、どうにかプレゼンに集中する。どなたも面白そうだが、波長の合いそうな方はやはり限られる。それでも複数いるのは僥倖か……と考えるうちに、最後のプレゼンターが現れた。

 あ、この人だわ。

 プレゼン慣れしていること、編集も営業も経験があること、大手出版社に勤務していること――おそらく倍率は高くなる。

 しかし私は、この人だと決めて素直に丸をつけた。

 負けることは考えていなかった。

 候補者が8人と知るまではな!!!

 定員2名を越えた編集者は、著者のじゃんけんによって担当が決定する。

 まあ4人くらいかなあ、と思いつつ前に出たら、あとからあとからわらわらわらわら人が来るんだよ逆光で顔見えにくいんだよ勘弁しろよビビるじゃないかっ。

 さすがに人数が多いので、まずスタッフとじゃんけんして人を減らすことになった。隣の人は勝利の手が見えると噂のポーズをしている。

 やれるか。

 やるのだ。

 直感で浮かんだ手を出した。出し続けた。

 こうして、私は前述の高橋さんとともに、最後のプレゼンター、澁野義一さんと組むことになる。

 ……高橋さんいたんだ、後ろいたからさっぱり気づかなかった←

 勝利報告をツイートしている間に他の組のじゃんけんが進み、決まらなかった残りの著者と希望を出さなかったデザイナーがくじ引きへと歩いていく。これが意外と人数が多い。

 後で聞くと、「せっかくなのでジャムセッションを楽しみたかった」という意見が複数から出てきた。

 誰と組んでも実力が出せる自信があるということか……勇者だなあ。

 全員のチームメンバーが決定し、席替えへ。

 山田さんはAチーム、金巻さんはGチーム、私と高橋さんはHチームに決まったのでここでお別れ。

 ――なんだけど、Gチームは席が近かったので、この先ちょいちょいお見かけすることになる。

 Hチーム、集合。

 編集者はいわずもがな、澁野さん。

 著者は私と高橋さん。

 デザイナーは「誰と組んでもおもしろそうだと思って」くじ引きで決まった嶋田佳奈子(@kanakodendesign)さん。

 とりあえず名刺交換をする。

 ちなみに今回、名刺裏に超ショートショート(作成40分)を載せてみて気づいたが、皆さん結構な確率で裏面を見ない。びっくりするほど見ない。

 オタクや起業家やブロガーの集まりだと、名刺裏まで情報を載せていることが多いから、当たり前にひっくり返してくれることが多いんだけど。

 むう、これは滑ったか。

 さて、NovelJamでは毎回お題が提出され、それに応じて作品を書いていくルールである。

 そのお題発表は17時(後に16時に繰り上げ)なので、それまで自己紹介を兼ねて雑談することになった。

 幸い嶋田さんとも波長が合うようで何とか会話に入れる。良かった良かった。

 ……って思ってたんだけどね。

澁「名刺渡しますねー(何かやたら強そうな名刺)」

嶋「今は電子書籍の表紙作りやっているんですけど、前は広告の仕事を長くしていました。先日担当した本がAmazon1位になって」

高「純文学で賞を取ったんだけどその先がねえ、今はジャンル小説やろうと思ってこないだSFの賞とって……あ、Wordpressの貢献者に名前あるんだよ」

 みんなのじっせきがつよすぎてわたしきまずい。

 いやいや、これほど能力の高いメンバーに囲まれたのはチャンスと言える。

 それに能力の高い人に囲まれるのは、大学の文学サークルで慣れているのだ。本当に同じ学生かよって人が多かったから。

 相性はいい、大丈夫、有能な人には甘えてしまおう!

 ……と考えた結果、本当に最後の最後まで「澁野さーん!!!(>_<)」と甘えまくってご迷惑かけることになったのは、すみませんでしたと思っている。

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次回、発表されるお題の衝撃! 初っ端から行き詰まるプロット! 果たして第1チェックポイント通過はなるのか?! お楽しみに。

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時代を司り、歴史を紡いできた女神たち。

ところが、次の時代の幕開けを告げる新しい女神の現出を、素直に喜べない事情があって…!?

元号を大胆に擬人化して描く、エスプリたっぷりの現代の寓話。 

NovelJam2018にて2泊3日で書き上げた物語です。

たそかれ時の女神たち』 飴乃ちはれ(著) 澁野義一(編) 嶋田佳奈子(デザイン)著

Kindle版はこちら。

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