NovelJam2日目の2~実は記事タイトルにも毎回悩んでいる~

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続・NovelJam2日目

 1日目の会場は宿舎から遠かったが、2日目と3日目は宿舎からほど近い建物が会場である。打ち合わせによく使う、ビッグs……いや、逆三角錐を地面に突き刺したような形の本館にも近くて便利だ。

 会場の外で、格好いい系ジャージを着た金巻さんがストレッチをしていた。

 会場はかすかにざわめきつつ、基本的に静かだった。作業する音、たまに会話する声が耳に響く。

 Hチームの机では、澁野さんが私の原稿をチェックする隣で嶋田さんが表紙のラフを作り、澁野さんの正面で高橋さんが原稿を書き進んでいた。

嶋「飴乃先生、タイトル決まりました?」

私「頭がぼけてて何も決められません……」

 タイトルには文章力と言うよりも、詩歌やコピーライティングのセンスが必要だと私は思う。

 そして私は、その類のセンスがない。天性もないし、自分での磨き方もわからないので、苦手なままになっている。

 小説とタイトルは、動画と静止画の違いのようなもので、似ているようでも使う能力は違う。タイトルセンスのいい同人作家は、ある意味超人と言っていい。

嶋「タイトルが決まらないと表紙が決まらないんで早めにお願いしますね。一応、こんな感じを考えてるんですけど」

私「おおっ」

 手書きのラフを見せられる、その瞬間だけ脳が動いた。女神たちのシルエットが、バストショットで縦から横へと並べられている。

 作者というのはチョロいもので、デザインラフを見ると元気になるようできているのだ。

 頭が動いたことで、周囲を見渡す余裕もできた。

 右手の机、Fチームでは著者2人がキーボードをたたき、okadaさんがペンタブを駆使して表紙を描いている。――え、描くの? この短時間一本勝負に?!

 なんとこの方、結局2人分の表紙の上に挿し絵まで描いてきた。あとで「ひと月分の仕事をしました……」とふらふらしていたので心配である。

 正面の机、Gチームはがらがらだ。編集者だけが座って作業している。

 私みたいに部屋にこもっているのかと思いきや、Twitterを見ると外に出てリフレッシュするなど、自由気ままにやっているらしい。

 他のチームの動向は、遠目に見る限りではわからない。

 Twitterではスタッフによる現地の様子ツイートや、他チームによるテンション高いツイートが流れている。

 うちの澁野さんは「完徹のつもりで来てます」と言っていたが、他所もいくつかは徹夜明けのテンションなのだろうか。大丈夫か。

私「あれ? あのメンターってコーナー、何です?」

嶋「制作の相談する場所じゃないかなー」

 部屋の壁際、「メンター」と書いた卓上ポスターを掲げた机に、2、3人ほどが座っている。

 興味本位で相談に行ってみたかったが、澁野さんからのチェックがいつ返るかわからないのであきらめた。ここを利用したチームもいたようだ。

 澁野さんはうなったり頭を抱えたりしながら、初稿をどんどんカラフルにしていく。

 考えてみれば、作品をプロの編集者に見てもらうのはこれが初めてというわけで、どうにも落ち着かないというか、だいぶ怖い。

 ポメラは持ってきていたので、待っている間に「イカイの契約者」の続きを書いてもよかったのだが、どうにもそこまで頭が回らず、ひたすらNovelJamタグを追いかけていた。

澁「終わりました。赤い部分をチェックしたら打ち合わせ行きましょう」

私「あ、はいっ」

飴乃ちはれさん初校戻し(ドラッグされました) - 澁野義一.pdf
飴乃ちはれさん初校戻し(ドラッグされました) 2 - 澁野義一.pdf
飴乃ちはれさん初校戻し(ドラッグされました) 3 - 澁野義一.pdf
飴乃ちはれさん初校戻し(ドラッグされました) 4 - 澁野義一.pdf
飴乃ちはれさん初校戻し(ドラッグされました) 5 - 澁野義一.pdf

 返された原稿は、当然のように真っ赤になっていた。初稿提出の時間が迫っていたため、見直しすらせずに送ったのでそこは当然である。

 主に地の文の説明不足にチェックが割かれている。会話のノリを中心にして追いかけた弊害だ。この辺りをしっかりチェックしてもらえるのはありがたい。

 字句の付け足しも問題ない。リズムが崩れるところはアレンジが必要だが、二稿チェックがあるからその時見てもらえばいい。

 ぺらり、とめくったところで私は目を瞬かせる。

 返された原稿は、赤・青・緑で書き込みがされていた。赤は確実に直すところ、青は打ち合わせで詰め直すところ、そして緑は、このまま生かすべき誉めるところ。

 それまでもちまちまと入っていた緑が、ページの半分ほどを囲って、「この辺とてもgood」と添えられている。その先には「この辺りまで文句なし」と。

 ――そこは、私がノリノリで駆け抜けていったところだった。

 まあ懐くよね、当然。

 世の中では編集不要論が繰り返し現れるが、今回初めて付いてもらって、私は編集者が必要だと痛感した。

 たいていの作家は、ひとりだけでは自分のクセに気づけないし、作品の中の客観的な良し悪しも分からない。新人ならばなおさらだ。

 もちろん編集者もピンキリではあるが、良い編集者は作家を持ち上げる追い風になってくれる。ひとりでは飛べないところまで連れて行ってくれる。

 少なくとも、今の私に編集者は必要だった。

 初稿返しを提出する際に多少トラブルがあり、その間に私は修正をするべく宿舎に戻った。

 耳栓をつけてポメラを広げ(昼食をとってから耳栓をつけていなかったことにその時気づいた)、まずは赤字部分を修正する。リズムが悪いな、と思ったところは勝手に調整した。まずければ次で返るだろう。

 描写不足による問題点は多々あったが、一番頭を抱えたのは一点だ。

 中の神と昭の神による、末っ子静の神へのディスりを書くよう言われたのである。

 落差を出すことで際だたせる手法はありがちだが効果的だ。今回は一番上の姉である明の神が鍵になるから、下2人の姉がディスって落ち込ませて欲しい、というのが序盤からの要望だった。

 問題は、私がディスるシーンを書いたことがほぼないことだ。

 小説家になろうに投稿している「イカイの契約者 ~死にたがり少女は異世界でも歪んでいる~」で、憎しみをぶつけるシーンや人の心を傷つけるシーンなら書いたことがある。

 主人公の母親は、娘である主人公を激しく憎んでいる。その怒りや恨みが主人公を打つことで、15歳の少女は死にたがりに育つのだ。そのために毎度しんどい思いをしながら、そういうシーンを書いていたことは何度もある。

 だが、女神たちは殺してやりたいほど憎み合っているわけではない(多分)。

 あくまで「可愛いけれど腹は立つ」とか、「言ってやらなきゃ気がすまない」とか、距離が近いゆえにたまるもやもやの中で、こき下ろすような距離感である。

 そ、そんな複雑なもの私に書けるのか……?

 結局、静の神の引け目を強くして、昭の神をその分圧しを強くすることで、それっぽい雰囲気はできた――と思う。

 中の神は、思ったままのことを言うせいで余計に煽る展開になる、という見せ方を目指して書いていったが、成功しているか自信はなかった。 

20180210_元号女神仮 (3) - 澁野義一.txt

送信して夕飯を食べに行く。

ぼうっとしていたせいか、食堂の人に「あなたどこの学校?」と聞かれた。NovelJam以外にも、複数の学校がセミナーハウスに合宿に来ており、それぞれ席が決まっていたのだ。

私「え、ええと、独立……」

食「?」

私(やばい団体名思い出せない! この後作家同盟でいいんだっけ?!)

食「あっ、はいはいあそこなのね!」

 無事テーブルに誘導された。二日目の夕食なんだから場所わかってるけど。

 後で「小説のやつです」と言えば良かったことに気づいて思わずツイートしたら、少し伸びた。

 その頃ニコ生では、皆の初稿を読んでみようコーナーが行われていた。確か審査員の海猫沢めろん先生(@uminekozawa)が出演していた。

 みんなスマホを取り出してつついている。まあ気になるよね。

 気になりすぎてお隣にいた方のこと忘れたよね(ごめんなさい)。

 Aチームからコメントしていくので、最後であるHチームはかなり後ろだ。夕食のほとんどを片づけた頃、ようやく女神たちの番が来た。

 ――って、執筆メモつけっぱなしで提出したの澁野さーーーん?!

 チェックする余裕などなかったので、全然見ていなかったのだ。すでに全世界に向けて公開されているので直しようがない。開き直るしかなかった。

海「アニメ化できそうだよね」

 その言葉だけが、妙に耳に残った。

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次回、いよいよ作品タイトル決定! そしてついに、原稿は完成一歩手前まで迫る。しかしその前には、これまで向き合うのを避け続けた、ある難関が待ち受けるのであった……。お楽しみに。

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時代を司り、歴史を紡いできた女神たち。

ところが、次の時代の幕開けを告げる新しい女神の現出を、素直に喜べない事情があって…!?

元号を大胆に擬人化して描く、エスプリたっぷりの現代の寓話。 

NovelJam2018にて2泊3日で書き上げた物語です。

たそかれ時の女神たち』 飴乃ちはれ(著) 澁野義一(編) 嶋田佳奈子(デザイン)著

Kindle版はこちら。

 

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