NovelJam3日目の2~そして冒頭に至る~

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続・NovelJam3日目

 ばたばたしているうちに14時。審査員もつれだってやってきて、いよいよプレゼンの始まりだ。

 順番としては、まず1冊目をAチームから順にプレゼンしていく。Hチームまで終わったら、今度は2冊目をまたAチームから順にプレゼンしていく形である。

 1周目。編集者が一生懸命、担当作品を推していく。

 途中熱が入りすぎて音が割れたり、スライドが上手く動かずよくわからなかったりしたが、まあよくあるプレゼンであった。

 著者がひとりでしゃべり倒したGチームと、「女神、襲来」と打ち出したうちのHチームが多少異色だった程度である。

 ちなみに、澁野さんのプレゼンは作品へのフックが実に多く、終わった瞬間「これは売れる」と確信した私なのだが、動画がニコ生にしか残っていないので実に残念である。

 販促に使えたら絶対売れるのにー! ていうか録画しとけば良かった!

 アマチュア作家をやっていると、自分の作品をプレゼンしてもらう機会などまずないので、そういう点でも感動的であった。

 さて、2周目。そろそろ眠くなってくるころである。

 その辺りを加味したのだろうか、誰も寝かせてくれないプレゼンが始まった。

 いや、Bチームまではさっきと大差なかったのだが――

 音割れ無視で絶叫を繰り出す編集者(やめろ耳が死ぬ)。

 作中のやばいネタにバンバンふれながら熱く言葉で駆け抜ける編集者(さっきと態度違くね?!)。

 書き下ろしらしき画像をバックに華麗なフリースタイルラップを繰り出して去っていく著者(作品説明なしとか新しいな)。

 突然自身の内面告白を始めた著者と「という演技をしていただきましたが……」と始める編集者(一人芝居してるって知らなきゃ騙されるわこれ)。

 ギター演奏をBGMに著者が作品解説をする……んだけどギターの音が大きすぎて声が拾えないチーム(最後は時間終わりまでギター演奏してた)。

 そんな中でトリをする羽目になった澁野さんは、「もーやりづらいったらないですね」と言いつつ、しっかり映画風の語りをしてプレゼンを終えてきたのだった。

 帰ってきた途端、澁野さんが言う。

澁「あの後飴乃さんだと(ネタ的に)きつかった」

皆「それな」

 本当それな。

 さて、これで全ての出番は終了、あとは審査を待つばかりとなった。

 Aチームがプレゼンでふれていたとおり、さっそく別チームへのチラシの配布を行っている。

 表紙もすごいが、周辺のデザインがまたプロい……このまま本屋に貼ってあっても違和感ない作りだ……

ス「飴乃さーん、コピーライトが入ってないんで対応お願いしまーす」

私「ふぇ? コピーライトってどこに――って画面切れてて見えなかったのかよ!」

 今回は制作者に3人いるので表記の仕方がわからず、澁野さんを呼んで相談させてもらった。お疲れのところすみません。

 ついでに配信ページを確認すると、さっそく数冊売れていた。楽しみにしてくれていた友人たちが買ってくれたのだろう。

 あ、レビューもついて……って金巻さん?! もう読んだんです?!

 なんと金巻さんは審査の前に全員の分を読んでレビューをつけた上、チームで受賞予想などをやっていたらしい。Gチームたくましいな。

私「新城カズマ先生(@SinjowKazma)が、炎上必至の審査だってツイートしてます」

澁「煽ってくるなー」

私(煽りなんだ)

 ちなみに新城先生、この後審査発表の最中にもツイートしていた。器用かよ。

 PCなどの荷物を片づけているうちに、16時予定の審査発表が17時に延長されたと連絡が入る。賞は既に決まったのだが、賞状を書くのに時間がかかっているらしい。

 会場の緊張が、いやがおうにも高まっていく。

ス「飴乃さん、本文情報が入ってないようなんですが」

私「えっ、そこ直しましたよ?」

ス「そうですか、再度確認しておきます」

 スタッフ落ち着いて。連絡は大事やで。

 ちなみにあと2回くらい尋ねられた←

 17時。

 審査員が、前に並べられた机についていく。

 その前にはマイクが用意され、いよいよ審査結果の発表準備が整った。

ス「それでは、エブリスタ賞から発表させていただきます。エブリスタの有田さん(@arimayoco)、お願いします」

有「はい。エブリスタ賞は――」

 もしも賞が取れるとしたら、おそらくはこの賞だけ。

 指をきゅっと、組んでいた。

「『たそかれ時の女神たち』」

 ――最初の二文字を聞いたとき、すぐに自分だとわかった。

 わかっても信じられない、ということがあるのだと、その時知った。

 拍手の音が響く。

 嶋田さんがはしゃいでいる。

 前に出てください、とスタッフが呼んでいる。

私「あの、わたし顔出しだめ」

 それが第一声であった。

 嶋田さんと澁野さんが顔出しNGを伝え、ニコ生中継中のまつもとあつしさん(@a_matsumoto)がOKを出す。

 よろよろと動き出した私を、嶋田さんが思いきりハグした。

「おめでとう!」

 ようやく耳が聞こえた。

 どうやって進んだかわからないまま、床のテープに沿って私・澁野さん・嶋田さんが並ぶ。

 有田さんが賞状の全文を読み上げ(後でわかったが、最初の受賞だったので全文だったのだ)、私に賞状を差し出す。

 自分だけで受け取るものなのかためらい、他に手が出ないので自分の手を出した。

ノベルジャムエブリスタ賞の賞状

 4人そろって記念写真を撮る。私はしっかり賞状で顔を隠した。

 有田さんの講評が始まる。

有「平成という時代がどんな時代だったのか、という問いに、一番明確に、かつ小説という形で温かく、はっきりと答えを出していたことに好感を持ちまして、賞に選ばせていただきました」

 受賞のポイントを聞きながら、ようやくじわじわと、賞を得た実感がわいてくる。

 が、この後衝撃の一言が放たれる。

有「実は一点残念な点がありまして――」

私(賞とったのに?!)

有「わたくし、この話を初稿で読みたかったです!」

 初稿?

 提出した初稿はもう最終稿の原型で、女神たちがわちゃわちゃしてたはずだけど……?

 ――あ、

飴乃ちはれさんプロット - 澁野義一.txt

 あらすじで提出したやつのことかーーーーー!!!!!

有「よろしければ是非、最初のプロットをふくらませた形のものも、どこかで発表していただければと思います」

 言いながら有田さんににこっとされたので、へらっと返した気がする。多分。

ス「それでは、受賞者から一言お願いします」

私(え、まじでやるの、私から?!)

 いや落ち着け、実は小中高と人よりステージに立った機会は多いんだ、とりあえず無難に澁野さんと嶋田さんを推そう←

私「えっと、私はアマチュアで20年以上書いているのですが、賞をとったのはこれが初めてで――」

 夏休みを費やして書いたものが、一言もなく落とされる。

 寝食を削って書いたものが、落ちたことを自分で調べなくてはならない。

「本当に、初めてで……」

 周囲のレベルの高さに絶望して、筆を折ろうとしたことがある。

 このまま書いていれば精神的に壊れる、と知らされ、全てを打ち砕き続けた時期がある。

 言葉という概念そのものから脳がリセットされ、「あいうえお」すら浮かべるのが困難な時もあった。

 それでも、物語ることを捨てられなくて。

 ゼロからの文体の再構築。

 月給を絞り出して創作論を読み、掌編を書いて重ねていく。

 自分が表す芯を知りたくて、セミナーやワークショップに時間を費やす。

 そうして書きつづって得た評価が、後続にやすやすと、圧倒的に抜かされる……

 昔から、自分の頭にだけある世界を、形にしたい衝動があった。

 でも、そのことにどんな価値があるのかわからなくて、ずっとずっと信じられなくて――

 気がつけば、涙声になっていた。

 澁野さんと嶋田さんの功績はしっかり主張したけれど、あとは何を言ったのか覚えていない。

 拍手の中、べしょべしょしながら席に戻り、受賞報告をツイートする。

さっそく届いた返信に返す間も、受賞作品は決まっていく。

結果は以下のようになった。

NovelJam 2018
「著者」×「編集者」×「デザイナー」チームとなって物語を紡ぐ!2泊3日の出版創作イベント「NovelJam2018」 「著者」「編集者」「デザイナー」が集まってチームを作り、ジャムセッション(即興演奏)のように事前に本格的な準備をせず参加者が互いに刺激を得ながら、ゼロから3日間で創り上げられた珠玉の16作品です。

審査大荒れツイートの背景は、優秀賞が2つとなり、最優秀賞が出なかったことだった。

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次回、審査の講評が行われ、すべてを終えた人々は懇親会へと流れ込む。審査員に個別の評価を聞きに尋ねた著者は、ある一言の集中砲火を浴びて、編集と慰め合う……最終話につき後日談のおまけ付き。お楽しみに。

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時代を司り、歴史を紡いできた女神たち。

ところが、次の時代の幕開けを告げる新しい女神の現出を、素直に喜べない事情があって…!?

元号を大胆に擬人化して描く、エスプリたっぷりの現代の寓話。 

NovelJam2018にて実質1日で書き上げた物語です。

たそかれ時の女神たち』 飴乃ちはれ(著) 澁野義一(編) 嶋田佳奈子(デザイン)著

Kindle版はこちら。

他主要ストアでも購入できます。

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