【100日100話】019 祭の帰り道

   

今日のお題は「わたあめ」です。
青春と幼馴染は夏の夜に似合いますね。

祭の帰り道

浴衣姿の2人連れが、祭の夜道を歩いていく。その片割れが手にするのは、今時珍しいほど大きなわたあめだった。
「わたあめの自動製造装置は19世紀末にアメリカの菓子製造業者が作り上げたことで一般化したんだ。もちろんそれ以前にも綿状にした飴を食べていた可能性はあるし、現に日本でも江戸時代の洒落本に『綿飴』という記述が見られる。アメリカのcotton candyが東日本では『わたあめ』、西日本では『わたがし』と呼ばれることが多いのはこの洒落本にあるように江戸ではわたあめという言葉が一般化していた前提が」
「はい、あーん」
「……」
ちぎられて一口大になった白い菓子が、饒舌な口元へ差し出される。白魚のようとは言わないまでも、その指先は形よく白い。
「早く食べないと縮んじゃうよ?」
「砂糖は空気中の湿気によって凝固するのだから縮むのではなく固まると」
「あーん」
「――……あ、」
「小さい」
声変わりした低音に咎められ、饒舌に高音を紡いでいた唇は拗ねるようにつぼまった後、大口で指ごとかぶりついたのだった。
 
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