【100日100話】 026 七夕は神に限らず

   

 それを食べると、かならず同じ夢を見る。
 ゆらり、たぷり。波打つ星空に、楕円の船で浮かぶ夢。
『そら、今日はごちそうだぞ』
 どんと大皿にのった、湯気の立つ濃い緑の楕円。大きな卵のようにも、ボールのようにも見えたっけ。
 そのふたを開ければ、星の浮かぶスープが現れる。内側から柔い身ごとすくい取るそれは、夏のまつりのひとくちだった。
 出て行ったのは遠い昔。悲しみはとうにまろくなり、ただ幸福だったころのひとかけらが、時折こうして夢に浮かぶ。
「じゃあそれ、俺にもくれよ」
 叩くような声に、私ははっと目を覚ました。
 見慣れた布団、見慣れた枕、見慣れたいつも通りの六畳ひと間。その中でさえなお生々しく、あの一瞬の響きが残る。
 こんなことは初めてだった。
「――まさか、ね」
 知ってはいるが知らない相手。他部署の人間とはそういうものだ。
 ただ、男性にしてはよく通る声だと、何とはなしに覚えていた。それがたまたま、記憶の端からこぼれ出たのだろう。
「二度寝……には微妙か。カフェでも行こうかな」
 すっかり染みついた独り言をつぶやいて、朝の支度を進めていく。
 その一時間後、相手とカフェで鉢合うことも、その日から二人でプロジェクトに取り組む羽目になることも――その先の全てを何も知らず、私はただいつものように、今日も家を出たのだった。

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今日のお題は「とうがん」です。

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