【100日100話】093 17時は慌ただしい

   

体の中がぎゅう詰めになると、また「のーざんぎょうでー」なるものがやってきたのかとカーゴは得心する。上がる回数と下がる回数は基本的にほぼ同じなのだが、この時ばかりは逸る者たちのせいか、下がる方がずっと多いように感じられる。
だが、今回は不思議なことに、誰も彼もが上へと上がっていく。最上階、屋上で中身をはき出しては、また下がってあれこれと詰められる。
びーる、と誰かが言った。
すみび、とまた誰かが言った。
屋上はかなり開けていて、ここでお昼を食べる者も多い。しかし今は夕方のはずで、現に誰もが襟元を緩めている。
次に上がると煙の気配がした。屋上に警報装置はないし、体の内にも入らなかったのでそのままにしておく。
また次に上がると赤い顔の者たちがいた。首に結ぶ布を頭に巻いている者もいる。できあがりがはやすぎる、と誰かが言った。
さらに下がって上がる途中、この時間には珍しい者が乗ってきた。それで最後だった。
「社長、間に合いましたよ!」
誰かが言った瞬間。
ひゅうんっ、と空で音がして、
光が一気に弾けた。
たまや、と誰かが言う。
かぎや、と別の誰かが言う。
ひゅうんっ、甲高い音に続いてまた弾ける。弾ける。
弾ける度に大輪の光が鮮やかに照り、また消える。
その音をカーゴは知っていた。毎年聞いていた音だった。けれど、自分でその正体を確かめる方法など持たなかった。
「秋口に花火って不思議な感じです」
「花火師の大会だからなあ」
「今年はノー残業デーに重なってよかったですね」
「社長は花火なら金を出すんだ」
ざわざわと漏れ聞こえる間にも、弾ける音と光は続いていく。
この煙ならしみついていいと、カーゴは感じるほどだった。

「24時間の過ごし方」より
提供サイト:TOY
http://toy.ohuda.com/

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