【100日100話】074 のどけき秋の、旅立ち日和

   

 ――入校確認いたしました。このまま印刷に入らせていただきます。
 その通知に、ようやく全身の力が抜ける。座椅子にもたれた首が「んあああああ」と声を上げ、緊張と疲労で固まった体が伸ばすまでもなく音を立てた。反動のままに机に突っ伏す。
 枚数がそろっていたとはいえ、今回は相当の無茶をした。それでも落とすことを選べなかったのは、いくつかの意地の重なりだ。
 くっついた頬と机が冷たい。そのままひと眠りといきたいところだったが、鼻先にある端末がそうできないことを告げていた。
「あー……夜明けきれい……」
 雲ひとつない薄青の空から、澄んだ日差しが差し込み照らす。その先には修羅場明けの私物とゴミしかないのに、あの人が愛したルノワールの、やわらかに色あふれた絵画をなぜか思い出させた。
「日焼け止めいるかなー……袱紗どこだっけなー……」
 煙と何とかは高いところが好きだ。今日はいい日和になるだろう。
 ともあれ今はこのコンビニゴミの山から、相応の服を探すのが先だった。
 オタクも黒真珠くらい付けねばと、そう言ったのはあの人だから。

今日のお題は「あきうらら」です。