【100日100話】055 ジャック・オ・ランタンは食べられない

   

今日のお題は「冬至」です。
冬至と言えばかぼちゃと柚子と一陽来復ですかね。
ちなみにハロウィンの飾りでよく使われる、オレンジ色の小さなかぼちゃは、食べることをあまり目的にされていないそうです。

ジャック・オ・ランタンは食べられない

ハロウィンと言えば、いまやすっかり仮装とかぼちゃ料理の行事である。真冬にもかぼちゃを食べる行事があるのだから、これでサンクスギビングにパンプキンパイでも出てくれば、年末近くまでかぼちゃの日々は確約となる。
「砂糖漬けをひと瓶埋めたアンの気持ちがわかるわ……」
太陽を固めたような黄金色であろうとも、毎度続けばかぼちゃはかぼちゃだ。それは甘く煮詰めたペーストになっても変わらない。
「何でカブのままでいてくんなかったのよう」
『知らぬ』
ふよふよと浮かぶ細い手足がくるりと踊る。
一見子供用の人形のようだが、全体に言って異様だった。四肢が小枝なら身体はごぼうの太い箇所だ。頭は燃えかすのマッチのようでよく見えず、服はつぎはぎだらけのぼろぼろで、靴なんて足の先にどうにか引っかかっている。
手に吊るカブだけがやたら豪華で、拳ひとつほどの大きさというのに、繊細な彫り物が中の炎に照らされていた。おまけに吊り紐は細い金の鎖だ。
「まあ、カブはカブで困るんだけどさ」
『煮ても焼いても漬けても美味いというに、受けつけぬとは哀れよな』
「……あんたの日本語、妙に時代がかってるよね」
天国にも地獄にも行けない元農民は、長年放浪するうちに旅に楽しみを見いだしたそうで、現在は日本のあちこちで過ごしている。各国の行事が年々ガラパゴス化するのが面白いのだと。
「”ガラパゴス”なんて言葉は知ってるのに」
『行ったからな』
犬みたいな名前のその船では、煮込んだ亀肉に添えるかぼちゃを、斧で割って調理していたらしい。そんな何とも言いづらい話題の中、どうにか甘いかぼちゃペーストを塗ったくったトーストを食べ終えた。
「胡椒とチーズでもまだ勝てないか……」
『次は粒あんだな』
「あんた何冷蔵庫の中身把握してんの」
『バターも付けよう』
「そんな名古屋トーストいやだ」
自分で食べられはしないくせに、どうしてか料理をしたがるのだ。しかも元飲んだくれらしく、脂と味の濃いものをたっぷりと。
後始末で肥りたくはない――のだが、すでに手遅れの感が否めなかった。

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