【100日100話】041 安全確実を重視しております。

   

 秋から冬は大根脚の季節だ。
 校則の白い靴下が余計に大根を目立たせる。黒タイツを履いてもいいことにはなっているけれど、みんな知らないのか目立ちたくないのか、靴下だけの素足で足早に歩く。

「男子の制服ってずるいよねー」
「スカート超寒いし~」

 膝上まで巻き上げた改造スカートで、女子のグループがそう騒ぐ。ちまちまと改造された制服はそれなりに可愛らしいのに、すねを覆うだるだるの靴下が、余計に脚を大根に見せているのはいいのだろうか。

 女子高生の脚はがっちりとして、常にぱんぱんに張っている。たまに骨のような脚の子もいるけれど、ほとんどは自転車か満員電車で通学するから、若い肉の上にむくみがのって、みちみちと太くなるのだ。

(高1……まだまだだな。せめて高2くらいじゃないと)

 真っ白な、ぱんと張った大根は、20歳を越えた頃からしなびていく。皮は水を弾かなくなり、寒くなるほど赤黒く、むくみはただの重さとなる。
 そんなことをまるで知らないから、10代の大根はまぶしいのだ。当人達には不本意でも。

(まったく、この時期だけの珍味だかなんだか知らないが、悪食な顧客ってのは困るもんだ)

 肉屋は豚に同情しない。
 魚屋は鯛に嘆かない。
 八百屋は大根を嬉々と売り、料理家は選別に躊躇わない。
 ――”狩人”も同じことだ。

(2、3、2、……ひとりか)

 理想的な脚とは言えないが、理想というのは得にくいものだ。
 夜と血を好む顧客には、そう説明しておくこととしよう。

今日のお題は「秋冬大根」です。
……秋冬、って付いてる意味があまりないかもしれない。