【100日100話】029 クロノス・タワーのレイウェン(新生後)

   

なろうテンプレを使ったプロローグらしきものが書きたかった。
わからない人はそのまま純粋でいてください。

クロノス・タワーのレイウェン(新生後)

それは、活字創作系サブカルに入り浸っていればよく聞く台詞。
そして、自分じゃ絶対言うはずがないと思う言葉。

「あ、この世界知ってる」

ブラウザゲーム、というジャンルがある。
美麗な3Dでがんがん動くMMOとかとは違って、ほとんど2D、せいぜいドットのミニキャラが3Dで動く程度。代わりにやることは単純だったり、キャラのスチルや音声が豊富だったり、作業ゲーと戦略ものの間を縫うような難易度だったり、と隙間時間にちょこちょこやるにはちょうどいい作りになっていた。
ま、かけ持ちの上に廃人プレイしまくってましたけどね!
そんな私が一番はまっていたのが、『クロノス・タワーのレイウェン』という時計修理工の物語である。
ブラウザゲームには珍しくストーリー色の強い作品で、プレイヤーは”レイウェン”として修理を手伝ってくれる妖精を集め、世界に点在する”支えの時計塔”を修理していくうちに、謎と陰謀に巻き込まれていく――というものだった。
この修理妖精がまたなごみ系というか、ちょんちょんおめめの単純なお顔に、まーるいおててでぴこぴこ動くのが大層かわいくてだな!
私だけでなく、世の仕事に疲れたかわいい物好きを癒しまくっていたのである――

「レイウェン」

めがっさ低いバリトンが腹に響く。はは、と笑いがこぼれるのは日本生まれの条件反射だと思ってもらいたい。
ああ、なぜ、今この瞬間にそんな知識を、前世を思い出してしまったのか。
せめてもう少し早ければ、全力でこの道を避けていたのに。

「”王”に選ばれた名誉ある立場だというのに、お前ときたらいつもいつも人の話を」
「さーせん」
「まず遮るな!」

怒れるバリトンボイスのこの美丈夫、人の姿はしているが人間ではない。”レイウェン”、つまり私の教育係として寄越された上位妖精だ。
彼らが”王”と呼ぶとき、それは無条件に妖精の王を指す。この王に選ばれた人間はレイウェンと呼ばれ、支えの時計塔を修理する宿命となるのだ。
それは同時に、この世界が私の愛した旧作でなく、新生アップデート後のものであることを示す。
レイウェンと人化した妖精による、無差別恋愛シミュレーション――種族も性別も越え、薔薇るも百合るも自由自在、当時存在した全妖精とのハーレムも可能――という、大変爛れた方向への突然の改悪に、かつての”私”は泣く泣くブラウザを閉じたのであった……その後の記憶はいっさいないけど、まあ大往生したんだと思おう。思いたい。

全身に響くバリトン説教を浴びながら、私は定められてしまった爛れた未来に、頭を抱えるのだった。

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