【100日100話】079 午前3時の悪夢

   

「この夜さえ越えてしまえば、そう願って何度朝を迎えただろう。
何度朝を迎えても、夜はいつでもやってくる。自信を刈り取る夜が。
『お前にそれはできないよ』
『お前にそんな才能あるわけない』
『まっとうに生きろよ』
『人の役にも立たないくせに』
どんな信念も理想も、夜の前ではくだけていく。報われない日々が長いほど、間違いじゃないかと思いたくなる。
――知っているのは、これが100年前から変わらない苦悩だということだけだ。
深夜の3時には魔物が居る。自信を食い散らかし疑念を押しつけて、自分の柔らかな部分を打ち消していく。
どんな賞も過去になる。あらゆる名誉は今ではない。生み出さなければ維持できないのに、生み出しても罵倒すら受けない日もある。
それでも夜は越えないとならない。朝まで耐え抜けば――もう少しだけ、自分の創造性を信じていられる。
だからこそ、今夜もこの夜を越えなくてはならない。」

早朝、世界がその死を惜しんだ巨匠の日記は、それを最後に閉じられていた。

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