【100日100話】060 注:付き合ってません

   

【100日100話】注:付き合ってません

確かに今日は寒かった。
北の地では根雪が降り積もり、南の地にも寒風舞う時節。温暖と言われるこの土地でさえも、冷えからは逃れられなかった。
――だからといって。
「なぜ私はのしかかられているのかな?」
「せんせー、冷えるだろ」
窓際寒いもんなー、と言いながら背中にのしかかるのは、一応私の生徒(17)である。学校ではなく塾だけれど。
アットホームと言えば聞こえはいいが、大手学習塾に食われないのが不思議なほどの小さな個人塾。自然生徒との距離は近くなりやすく、時折このようになれなれしい者も出る。
「ふざけるなら指導やめるよ」
「うん? 照れる? どきどきする?」
「腕が邪魔。あと重い」
ぺしりと軽くたたくと、前に伸ばされていた腕が私の首と肩を抱え込んだ。なぜだ。
「身体冷やすのはよくないぜ。脂肪つくぞ、胸以外に」
「上着はあるから熱伝導の必要はないのだけど?」
「横より後ろのが見やすいじゃん」
ぎゅう、と機嫌よさげに抱きつかれるのを振り払えないのは、結局素直にこの席が寒いからだ。10代の熱というのは底なしで、胸の脂肪を挟んでもなお、そこらのストーブより暖かい。
「本当重いから降りて」
「愛が?」
「バカ」
後ろ手にふるった拳骨は、当たる前に掴まれ指が絡んだ。

*

今日のお題は「せなぶとん」です。

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