【100日100話】091 偶然に気づいた15時

   

「あら、素敵」
彼女はつぶやいた。依頼された件にちょうどいい人間が見つかったのである。
それはひどく難しい案件で、依頼主もほとんどあきらめているようであった。交換転生に最適な、波長の合う魂はなかなか見つからないものだからである。しかも依頼主は、やっかいな肉体を抱えていた。
しかし、彼(であるらしい)の望みは叶わないと思うからこそなお強く、今もひしひしと願っているのが彼女には伝わってくるのだった。
「生まれて推定20年未満、外出形跡なし、健康状態は体力以外問題なし、趣味は大規模オンラインゲームでの”自殺”――素晴らしいわ、何て波長の合った絶望でしょう」
彼女はティータイムの前にと準備を整え、相手の世界へと乗り込んだ。
「こんにちは。ちょっと言うこと聞いてくださいませね」
すぱんと魂を刈り取り、記憶をいくつかねつ造する。
そして、預かっていた依頼主の魂の一部――ある世界で”三世を滅ぼす業火”と恐れられ、今まさに勇者によって滅ぼうとしている凶鳥の――を倒れた体に埋め込むと、世界から姿を消した。
こうして殺されたことを忘れた、典型的オタク引きこもり少年であった魂に、彼女はいつも通りの台詞を告げたのである。
「あなたは手違いで亡くなってしまいましたの。お詫びにこことは異なる場所で、世界最強の者として生まれ変わらせて差し上げました」
異世界への転生女神。それは彼女の俗名であった。
ゆえにこの一連の”仕事”は、彼女にはティータイム前程度のことだったのである。

「24時間の過ごし方」より
提供サイト:TOY
http://toy.ohuda.com/

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