【100日100話】 051 理解しがたい人々

   

 三度枯れ葉が目についたら、恋を終えると決めている。
『さよなら、二度と会いませんように』
 テキストだけでぱたりと閉じる。反応はなかった。同意すらもう面倒らしい。
 ガラケーなんて時代遅れだ、と言われたときから、すでに溝はできていた。醒めてしまえば、ろくな人間なんていない。自分も含めて。
 ――人に興味のない奴が、恋なんてちゃんちゃらおかしいや。
 遠い昔、何某かにそう言われたことがある。妙に古い言葉ばかり使う、少しばかり変わった男。
 ――他人なんて、ちっと毛色の違う珍生物だとでも思ってるんだろ。そんな目だ。
 あの日も相当酔っていた。赤い顔と白熱灯の光、誰某かがトイレに駆け込む音。ビールの色がやけに鮮やかで、泡がふつふつと昇っていた。
 ――それが何か悪いのか。
 返したかどうかは覚えがない。ただ、昔から不思議だった。
 美しいもの、変わったもの、魅力的なものに満ち満ちた世界で、他人というのはこちらを向けと、やたらうるさくかしましい。だからどうにか視線を向けてやっているのに、眺める以外の何を求めると言うのだろう。
 他人たちは勝手におごり、勝手に開き、勝手に泣いて、たまに殴る。そんな彼らのふるまいが、私には全てばらばらで、ただ珍妙だという感想以外、何の意図も持たなかった。
 ――お前は人を愛せないよ。
 そう言われたので、そうなのだと思う。

今日のお題は「すきま風」です。
明文化されない思考の差が何を起こしているかを、持つ人も持たざる人も互いにわかっていないのです。